iBookやkindleなど、この十数年間のIT化の波を出版界も漏れることなく被り、2017年の紙媒体での書籍の売上は13年連続で減少し続け、前年比6.9%減少の1兆3701億円となっています。対する電子書籍は前年比16%増の2215億円と好調をキープし続けています。
「かさばらないし汚れたりしないから電子書籍の方が優れている。」「紙には紙の良さがある。」というような「紙媒体VS電子書籍」という構図がしばしば見受けられますが、この二項対立に果たして決着はつくのでしょうか。数年前から疑問を持った私はその両者(電子書籍はiBookを使用)を使用してみたので、その経験を元に私達はこの二者とどう付き合っていくべきかを考察しようと思います。
電子書籍のメリット
電子書籍のメリットは皆さんもご存知の通り
- 軽い
- かさばらない
- 風化しない
などの質量のなさからなる持ち運び易さがまず出てくると思います。
通勤や通学時間で書籍を読もうと思うと、文庫本でも満員電車の中では広げるのが難しいですが、スマートフォンなら簡単に読むことができます。
確かにこれまでは紙の書籍をたくさんカバンに入れて運ぶ必要があったのがポケットの中に何冊でも本を持ち運べるようになったというのは大きな利点ですが、それ以上に電子書籍は売り切れという概念がないというのが一番の魅力だと思います。
例えば目的の書籍が書店になかった場合、取次(出版社と書店をつなげる流通業者)に在庫があっても2~3日、出版社から取り寄せる場合は1週間から10日も待たなければなりません。
それと比べると電子書籍はまずデータなので在庫がないという概念がありません。この点が紙媒体の書籍と比べると非常に便利だと思います。
電子書籍のデメリット
「電子辞書のデメリットなんてないよ!」と思う方もいるかもしれませんが、私が考える電子書籍のデメリットは
- コレクション(アイコン)としての魅力が欠ける
- 海賊版が出回りやすい
という2点があると考えています。
紙媒体の書籍を好む人の「紙の良さ」というのは物体としての本に魅力を感じていると言い換える事ができます(電子書籍の出現によってできた新しい価値とも言うことができますが…)。
また最近取り締まられましたが「漫画村」などの海賊版サービスによって本来出版界が獲得するべき利益が得られないという事態の危険性はみなさんも想像しやすいのではないのでしょうか。
紙媒体書籍のメリット
紙の本の魅力は
- 本そのものに価値がある
- モノとしての本が目に見える
という2点にあると考えます。
紙媒体と電子書籍を「何を売っているのか」というモノサシでみた場合、電子書籍の特徴を「情報を売っている」と捉えなおすと紙媒体には「形としてあるものを売っている」ということができます。少し哲学めいてしまいますが、形があるからなくなる(=在庫がなくなる)のであって、「形がないものはなくならない(売り切れという概念がない)」という違いがわかると思います。このモノとしての本を集める、めくる、置くという行為に紙媒体を好んでいる方(少なくとも私)は魅力を感じているのだと思います。
紙媒体書籍のデメリット
これもモノとしての本があるからこそのデメリットが当然あるわけで、
- 汚れる
- 紛失の恐れがある
- 重い、かさばる
などの短所が紙媒体にはあります。
また電子書籍のメリットで取り上げたように、本の取り寄せはAmazonを使ったとしても電子書籍のダウンロードの速さには追いつけません。
結局どちらがいいのか
ここまで電子書籍と紙媒体の書籍のメリットとデメリットを述べてきましたが、私が両方使ってみて感じたのは「紙媒体VS電子書籍」という二項対立で二者を論じること自体が間違っているということです。場所や時間によって紙の書籍と電子書籍は使い分けるべきで、「電子書籍のほうが便利だから紙の書籍はいらない」という簡単な話ではなくて、より人々が読書に親しんでもらうにはこの両者をうまく使い分けるのが大事だというのが私の出した結論です。たとえば通勤中にビジネス参考書を読むとしたら、私達がビジネス参考書にもとめているのはそこに書いてある情報を回収するというのが大きいので電子書籍のほうが向いていますが、休日にコーヒーを飲みながら小説を読んでリフレッシュしたいという場合は紙の匂いや紙をめくるという行為にも役割があるのでこれは紙の文庫本の方が向いていると思います。
どうしてこの記事を書こうと思ったか
私はインターンをする傍らで書店でもアルバイトをしているのですが、アルバイトを始めてから私のように小説や単行本を買うお客さん(特に若い層)が少ないと感じたことがきっかけでした。雑誌やライトノベルはそこそこ売れるのに、こんなに(主観的ですが)おもしろい文庫や単行本を買わない、読まないのはもったいないと思い始めるようになりました。文庫にはその数だけの物語があって、皆さんの胸に響く小説がきっとあるはずです。「文庫本、単行本は時代遅れ」なんて言わずに、この記事を読んだ帰り道にみなさんが近くの本屋さんにふらりと立ち寄って欲しいと思いこの記事を書きました。
今夜は少し寄り道してみてはいかがでしょうか